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2023

ナイトライフの再建は、屋外空間から始まる ─「GLOBAL NIGHTTIME RECOVERY PLAN」を読み解く(1)

GNRPとは?

2021年現在、ナイトタイムエコノミーは未曾有の危機に直面しています。既存のエコシステムが成り立たなってしまった今、わたしたちはどのようにしてナイトカルチャーを再建していけるのでしょうか? 

⽂化・クリエイティブ関連のグローバル・コン サルタントであるVibeLabが主催となり、世界のナイトタイムエコノミーに携わる70以上の都市から130⼈に及ぶ関連事業者、教育関係者、医療従事者、業界リーダー等が参加し、取りまとめている「GLOBAL NIGHTTIME RECOVERY PLAN(以下、GNRP)」という調査・提⾔集があります。

ナイトデザイン領域でコンサルティング事業を展開しているNEWSKOOLは、ナイトタイムエコノミー推進協議会(JNEA)が日本語翻訳版を公開している「GNRP」の翻訳に携わりました。わたしたちが運営する「Night Design Lab」では、今回から7回にわたって「GNRP」の読み解きを行います。

未曾有の危機に直面しているナイトタイム産業はいま既存のナイトタイムについて考え直さなければならない。業界復興のためにはナイトタイム関わる全ての人々が戦術的かつクリエイティブな思考を持ち、昼夜問わず活気に溢れた都市とはどのようなものなのか、その空間的・時間的な側面を考慮すべきだ。

「GNRP」とは上記の提言を掲げ、ナイトタイムに関わるすべての人に、安全で公平な都市の復興計画に向けた知識とツールを提供することを目的とした、ガイドラインです。現状を打破し、より持続可能なナイトカルチャーの基盤を整えるために今できることはなにか?この問いに答えるために、GNRPは大いに貢献するはずです。

ナイトベニューの再開やCOVID-19に対する規制緩和は、三密を避けることが可能で、ウィルス感染リスクの少ない屋外空間で先行されます。しかし、社会活動をする場としての屋外の空間の需要が急増する中で、感染への懸念や騒音によって、住人、行政、自治体、事業者の中で摩擦が生じています。この問題を解決するためには規範や暗黙のルールを再検討する必要があります。

GNRPでは摩擦を解消し、屋外空間活用の新たなルールを迅速に広めるべく、会場運営者、自治体、警察、その他関係者が直面する課題と必要な解決策について分析しています。

屋外空間活用の道筋

GNRPでは屋外空間の活用法として、「オープンエアダイニング」、「屋外イベント」、「自由に人が集める空間」の3つを想定しています。オープンエアーダイニングはナイトライフの再開と規制緩和の最前線にあり、世界各国で様々な取り組みが行われいます。屋外イベントの開催に関しても、長らくあった規範や楽しい暗黙のルールが見直されつつあります。自由に人が集める空間は需要が高まる一方で、安全性の担保が難しく、より応用的な知見が必要となります。

GNRPでは、上記のような屋外空間活用の先行事例が多数紹介されています。今回はその中でも都市全体を上げて屋外空間の活用に踏み出したヴィリニュスの事例を取り上げます。

GNRPでは、オープンエアダイニングに関する都市の取り組みの先行事例として、リトアニア共和国の首都ヴィリニュスの取り組みを紹介しています。ヴィリニュスでは「道路が塞がれおらず、テーブルが2メートル離れていること」を条件に、全ての私有地において屋外での食事を許可しました。

この取り組みによって街は明らかに活気に満ち溢れました。一方で、小さな舗道しか持たない事業者にとっては経済的なメリットが僅かだったのにも関わらず、「飲食業界の危機は終わった」という印象を市民に与えてしまったという問題点もありました。また、この施策を実施するにあたって、段階的な規制を緩和を行いましたが、様々な混乱を生んだのも事実です。ソーシャルディスタンスの規制に対するルールの頻繁な変更や、公共空間と私有地の法律上のルールの違いなどの様々な要素により、法秩序は崩壊してしまったのです。

このような混乱を防ぐためには、行政、会場運営者、地域住民の今まで以上のコミュケーション。そして、更に共に働き、実験し、屋外空間の利用の可能性についての考え直そうとする意識が必要不可欠です。

政策とコミュニケーション

屋外空間を活用するために避けては通れない問題として、騒音の管理の問題があります。行政や事業者、住民での摩擦を避けるために、GNRPでは6つの取り組みが必要であると提言しています。

政策を決定し、施行する際の重要な視点として、「地域との対話」と「情報伝達」があります。政策に地域視点を取り入れるため、政策が複雑化しすぎて強制力のない状態になることを避けるため、行政と地域との対話のプラットフォームを整える必要があるのです。具体策としては、行政と地域組合や企業団体間での会議の開催や確な情報提供を行うためのシンプルなWEBサイトの設計、インフォグラフィックキャンペーンによるルールの周知などが挙げられます。

事業者がベニューを運営する上での視点としては「営業時間の短縮」や「騒音のモニタリング」があります。営業時間の短縮の視点では、論理的根拠のおない営業時間制限に抵抗すべく、事業者はトラブルのホットスポットを特定する必要があると述べています。また、騒音のモニタリングの視点では、事業者はクレームの電話を待つだけではなく、dBメーターでの測定やパトロールを通じて騒音を絶えず監視する必要があると述べています。

行政と事業者の両者が持つべき視点としては「トラブルの調停」と「情報の透明化」があります。トラブルの調停の視点では、トラブルが起こってしまった場合は、法的な協定執行をする前に調停を利用すべきであると主張しています。情報の透明化の視点では、行政や事業者が集めた情報をオープンソース化することで、国民から信頼を高めることが出来ると同時に、法執行機関のリソース分配を助けることができると述べています。

日本での屋外空間活用

GNRP中で取り上げられている屋外空間活用の事例は海外のものが殆どですが、日本ではどのような取り組みが行われているのでしょうか?日本におけるパブリックスペース活用の事例としては、パークレットの取り組みがあります。パークレットとは廃止した路上駐車場に自由に使える休憩スペースを設置することで、市民の憩い場を創出する取り組みです。

静岡県静岡市では、使わなくなった駐車スペースにパークレットを設置した社会実験「ハニカムスクエア」が2020年9月25日から2021年3月31日まで実施されました。設置されたパークレットではピクニックする人々や談笑する人々の姿が多く観測されました。これにより街は活気を取り戻し、市民の憩いの場を創出することを可能にしました。この取り組みは県内事例がない中での実施だったため、庁内協議、地元協議、警察協議が難航するかと思われましたが、コロナ禍における屋外需要の高まりと、憩いの場が欲しいという市民の意見の後押しがあったことから、スムーズに協議が進みました。静岡市のハニカムスクエア」の取り組みはステークホルダーの連帯が屋外空間の活用へと結びついたソーシャルグッドな取り組みだといえます。

持続可能性の検討

現在は、すべての都市で状況が異なり、国によって感染レベルも異なる状況です。しかしながら「人と関わりたい」という本能は全人類共通であり、社交の場としての屋外空間の需要は高まっています。屋外空間の活用を実現するためには、ナイトライフに関わる全ての人々が住人や行政と連携し、管理と規制について議論していく必要性があります。この重要性を理解し、ナイトタイムエコノミー推進プロジェクトを成功させた都市は、今回の危機から回復するための大きなアドバンテージを得ることができると同時に、全市民に利益をもたらすナイトライフの実現に大きく近づくはずです。

GNRP第1章は下記のリンクよりダウンロードすることができます。
第1章:屋外空間のナイトライフとCOVID-19

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