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2023

「不動産企画」を通じて、文化と経済が相互作用するエリアをつくる──「KAGANHOTEL-河岸ホテル-」運営者に聞く、都市を豊かにするためのアプローチ

不動産を切り口に都市の課題を解決する

京都にて若手現代アーティストの住むコミュニティ型アートホテル「KAGANHOTEL-河岸ホテル-」や、職住一体型クリエイティブセンター「REDIY」を運営する株式会社めいの扇沢友樹さん、日下部淑世さん。

前編では、人々や都市を豊かにしていくために不動産が担うべき機能として「新しい関係性づくり」と「都市のアーカイブ」といったキーワードが出てきました。

後編では、お二人が不動産企画を行う上で直面した課題を起点として、現在の都市が抱える問題と、その解決策について考えていきます。

COVID-19による京都の環境変化

──COVID-19の影響によって、京都という都市にどのような変化があったのでしょうか?

日下部さん:都市に起こった変化として一番大きいのは、空き物件が溢れてしまったことです。オリンピックによる観光需要の増加が期待されたときに、京都全体の不動産の方向性は町家をリノベーションして昔ながらの町並みを残しながらも経済効果を見ていく、というものから、町家を一度更地にしてから大規模なホテルにするという方針のものに変化していきました。同じ土地面積では、町家よりも、多くの人が泊まれるホテルのほうが収益率が高いわけですから。このトレンドの変化に伴って、大量にホテルが作られましたが、宿泊客が入らず採算性が合わないと事態が起こっています。

また、商業施設でも同じようなことが起こりました。インバウンド需要を見込んで、テナントを入れ替えし延命行為をしていた商業施設の一部はテナントが大幅に抜け、丸ごと1テナントに貸す形式に変化しました。ハードにいれるべきソフトがなくなってしまったのです。

──この状態への打開策はあると思いますか?

扇沢さん:打開策ではないですが、必然的にホテルや賃貸業が立ち行かなくなった場合には、ビジネスオーナーや貸付をした銀行が、そのビジネスのオーナーチェンジを図り、不良債権にならないように処理するのだと思います。その引受先が日本や京都の企業ならいいのですが、より資本が外部化されグローバルな企業が引受手になる可能性が高いのではないでしょうか?

──資本が外部化していったときに、京都はその独自の魅力を保っていけるのでしょうか?

日下部さん:京都はとても歴史の長い土地なので、資本の外部化が起こっても、その独自性はなくならないと思っています。個人的には、資本が外部化しても、建物自体のオーナーは地元民やるのが合理的かなと。そのような仕組みがつくれるのであれば、街としてのコミュニティは守られるのではないか。むしろ、資本の外部化を悲観的に捉えず、これまでにはなかったようなコラボレーションや化学反応が起こるチャンスと捉えるのが大切なのではと思います。

文化と経済が相互作用した都市

──京都は独自のカルチャーが根付いており、経済性も伴っている豊かな都市だなと感じています。実際に、京都で不動産企画を行うお二人は京都をどのように見ているのでしょうか?

扇沢さん:京都の一番の特徴はその歴史の長さです。消費されきれないほどの文化が土地に根づいているためインディペンデントな魅力がなくなることはないと思います。ただ、そんな京都でも、COVID-19以前から都市の均一化が起こっています。観光地としての都市開発と古くからの町並みを残していくという矛盾した2つのバランスをうまくとっていかなければいけないのが難しいところです。

──実際に、どのような問題が京都で起こっていたのでしょうか?

日下部さん:京都らしい町並みを構成されるとされる町家ですが、維持費が想像以上にかかってしまいます。これをオーナーのみが負担することが現実的ではないため、行政からの補助金も出るのですがそれでも泣く泣く他国の富裕層に売ったり、関東圏の大規模資本に土地ごと売買して、町家が更地になっていく、という現実があります。

──都市の中で大規模資本しか生き残れないという状況は、日本中、さまざまなかたちで表面化してきている課題ですね。このような状況の中で都市を豊かにしていくにはどのようなアプローチが必要なのでしょうか?

日下部さん:行政にしろ、プレイヤーにしろ、お互いに発信して、しっかりとコミュニケーションしていくことが、エリアを豊かにすることにつながると思います。都市を豊かにするといっても、結局は人と人のコミュニケーションの問題に帰結すると思っています。

エリアに関わるステークホルダー1人ひとりが、エリアに対するビジョンを掲げて、意見交換していく。思ったことをSNSに投稿するだけではなく、手を動かした結果を現実世界にアウトプットとしてみせていく。

私たちも、河岸ホテルやREDIYというプロダクトを世の中に向けて発信したからこそ、賛同してくれる方々が現れ物事が一気に進んでいったという背景があります。河岸ホテルの建物所有者は京都市が運営する市場の業者さんなのですが、「京都市の土地の上で商売させてもらってるから、京都市のためになることなら協力します」といって、貸出を決意してくれました。

オーナーさんが、市のビジョンと私たちのビジョンが一致しているなと解釈してくれたこそ、物件を貸してくれたのだと思っています。

扇沢さん:やりたいことに明確な方向性がある場合は、他の都道府県や市町村にそれをぶつけるみるのもいいのかなと思います。逆に言えば、行政として明確のビジョンがあれば、そこはクリエイティブな人々が集まるようなエリアになっていくのかなとも思います。

都市との向き合い方

──最後に、都市はとても複雑で、その変化の測定もしづらいものだと思っています。都市の変化しなさに絶望しないためには、私たちはどのように都市に対して向き合えばいいのでしょうか?

扇沢さん:僕は都市は簡単に変えられるものじゃないですが、どんな共同体を誘致するとか、関係性を育めるかであれば僕らの影響の範囲内で変えられることだと考えています。つまり、“河岸ホテルやREDIYを運営する中で、出会った人々との関係性を豊かにするには?”を考えていくことで、自然にエリア全体が豊かになっていくと考えています。

日下部さん:扇沢さんと同意見です。どのエリアを見ても、そこには地元民の生活があり、既存のエコシステムが存在しています。新参の立場で、そのエコシステムを変えるというのは恐れ多いなと。自分たちの思い描くビジョンをどうエリアに溶け込ませることができるのかを考えて、そのエリアだからこそできる最高のアウトプットを作っていく。それだけだと思い活動しています。

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